秘密の記憶は恋の契約
(これと、私が作った分の資料を一緒にまとめて・・・と)


プリントアウトした資料を卓上でトントンと整えると、小さく深呼吸をしてから綾部くんに声をかけた。

「綾部くん。アクアシュガーの資料、出来上がったよ」

これだけの言葉なのに、緊張して声が上ずってしまった。

気まずい関係が続くなか、やはり『普通』は難しい。

「・・・ああ」

30分程前に見つかったバグと格闘中の彼は、私をチラリと見て頷くと、すぐにまたパソコン画面へ視線を戻した。

「おつかれ。じゃあ、おまえはもう帰れ」


(え?)


前を向いたまま、淡々と私に告げる彼。

けれど私はその提案に、従うことは出来なかった。

「バグ・・・一カ所じゃないんでしょう?私もやるよ」

「いい。オレ一人ですぐに終わるレベルだから」

「でも・・・二人でやった方が早く終わるし・・・」

「・・・いいって。平気だって言ってんだろ。とにかくおまえはもう帰れ」

「・・・」

強い口調で言われてしまい、私はぐっと押し黙る。

それ以上言える雰囲気ではなくて、私は「わかった」と言って帰り支度を整えた。
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