秘密の記憶は恋の契約
ブブブ・・・。

続く振動。メールではなく電話のようだ。

私はさっと踵を返し、ひと気のない場所に移って画面の文字を確認した。


(あ、真依だ・・・)


電話の主は、同期の桑原真依だった。

通話ボタンを指で触れると、私はスマホを耳に当てた。

「もしもーし」

「あ、美咲?いまどこにいる?」

「桜木町の駅だけど・・・」

「駅って・・・ホーム?」

「ううん。改札入る前のとこ」

「ほんと!?よかったー!じゃあ今から『ドルチェノート』来てくれる?ほら、前に詩織と三人で飲んだとこ」

「え!?なんで・・・」

「急いでねー!」

そう言うと、真依の電話はプツリと切れた。


(えー・・・)


もう・・・強引だなあ・・・。

真依は、少し天然がかった性格である。

私がいま戸惑っていることは、確実に通じていないと思う。


(・・・まあいいか・・・)


落ち込んでいるところだし、真依と会えば、少しは気が晴れるかもしれない。


(詩織も一緒かな?妊婦さんだけど、時間はまだ早いし・・・)


考えつつも、電話をかけ直すのが面倒に感じた私は、そのまま指定された店へ向かうことにした。

駅から会社までの道を一旦戻り、そこからさらに数分歩くと、ぼんやりと照らされた赤い看板のお店が見えた。
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