秘密の記憶は恋の契約
「仕事で会った時に、かわいいなって思ったのは本当。今日話してて、もっとそう思いました」

「あ・・・あの・・・」

気持ちが、全く言葉にならない。

言葉に出来るほど、頭の中の整理が追い付いていなかった。

「・・・すぐじゃなくてもいいですよ。まだ・・・仕事でも会いますし。

そうだな・・・うちとの仕事が終わった後にでも、返事聞かせてもらえますか」

真剣な瞳。

これ以上彼に黙っているのは、卑怯すぎることだと思った。

「や、山崎さん・・・!」

私は意を決して、山崎さんの顔を見上げる。

目が合った彼は、次の言葉を促すように、右の中指でメガネのブリッジを押し上げた。

「ごめんなさい・・・!私・・・本当は・・・彼氏いるんです」

「え?」


(言った・・・)


責められるかもしれない。

無言で、軽蔑されてしまうかもしれない。

うつむいた私は、そんな覚悟を決めて、彼の言葉を待っていた。

けれど。

「・・・それは、入り込む余地はないのかな」

静かな口調。

私は、予想とは違う彼の反応に、驚いて山崎さんの顔を見た。

「口説きに入ると必ず話をそらすから。もしかしたらって、少し・・・そんな気はしてました。

迷惑なのかなってことも、もちろん考えましたけど。

・・・それで、その彼とは・・・上手くいってるんですか」

「え・・・」
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