秘密の記憶は恋の契約
予想外の情報に、私は思考を整理する。

「あの・・・綾部くん・・・すぐに終わるからって・・・。だから早く帰れって、私に言ってきたんですけど・・・」

「もー!だから!美咲ちゃん、最近疲れて体調悪そうだったでしょ。

綾部くんは美咲ちゃんを休ませたくて、早く帰らせたんだと思うよ?」

「!?ま、まさか・・・」

「だって、何個かバグが出てたんでしょう?そんなの、すぐに終わるわけないじゃない」

「で、でも・・・」

「すぐに終わらないってことくらい、綾部くんなら当然わかってたと思うよ。

どういう言い方されたのかわからないけど・・・いずれにせよ、それはやっぱり美咲ちゃんのことを思って、言ったことだと思うけど」


(うそ・・・)


金田さんの言葉に、私は言葉にならない声を出す。

もしそれが本当に、綾部くんの気持ちなら。

私は彼にものすごい誤解をしてしまったことになる。


(『早く帰れ』って・・・冷たく言われた気がしたから・・・)


一緒にいたくないんだとか、信頼されてないのかなとか、私はそんなことばかり、ずっと一人で考えていて。

彼の心遣いなど、全く気付いていなかった。


(どうしよう・・・)


急速に、胸がざわめく。

エレベーターに乗り5階に着くや否や、私は金田さんに会釈して、フロアに向かって駆け出した。



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