秘密の記憶は恋の契約
「・・・そう。かっこいいもんな、あの人」

「!」

全てを見限ったような彼の声に、私の胸に鋭い痛みがズキンと走る。

「あっ!葉山課長だー!」

何事もなかったように、真依は無邪気に話題を変える。

ちょうど出社してきた課長の姿が、彼女の視界に入ったようだ。

「じゃあまたね!」

笑顔で手をあげ、真依は課長の元へと駆けていく。

残された私と綾部くんの間には、恐ろしいくらいのヒンヤリとした空気が流れた。

「・・・」

「・・・」


(どうしよう・・・)


完全に、言い訳しか思いつかないけれど。 

それでも何か言わずにはいられなくて、私は彼に話を切り出そうとした。

「あ、あの・・・」

「・・・言い訳とかもういいから。とりあえず仕事しろ」

目線を合わせず告げられた言葉に、胸の痛みが増していく。

「・・・うん・・・。・・・・・・ごめんね・・・」

それ以上、私は何も言えなかった。

震える手で引いた椅子に座ると、いままでにないくらい、泣き出しそうな思いで彼の隣で仕事を始めた。





< 146 / 324 >

この作品をシェア

pagetop