秘密の記憶は恋の契約
「ごめん。ちょっと・・・予定があって」

今日に限って。

私は、先ほど交わしたばかりの山崎さんとの約束を、しなければよかったと思わず後悔してしまう。

「・・・そっか・・・じゃあ、また今度な」

「うん・・・ごめんね」

「いや」と言って視線をそらすと、綾部くんは席に座ってパソコンを操作し始めた。


(ん?)


「仕事、まだ何か残ってるの?」

「いや、確認したいことがあるだけ。見たらすぐに帰るから」

「そっか・・・」

なんとなく、帰るのが名残惜しくなったけど、約束の時間も迫っているし、綾部くんを待つのも気まずい。

「じゃあ・・・お先に」

「ああ」

彼が軽く右手を上げた。

私は少しだけ笑顔を見せて、そのままフロアを後にした。






< 193 / 324 >

この作品をシェア

pagetop