秘密の記憶は恋の契約
外灯が、ポツリポツリと夜の闇を照らしている。

閉店した後の商店街を通り抜けると、駅前の雑踏が嘘だったかのように、静かな住宅街へと入って行った。

ゆっくりとした歩調。

並んで二人で歩きながら、彼は「何から話すか」と言って左隣の私を見た。

「電車の中は落ち着かなかったからな。佐々木さんのこと・・・聞きたかったら話すけど」

私たちの、いちばん最初のケンカの理由。

佐々木さんに、ヤキモチをやいた私の気持ちを考えたのだろう、彼は私に問いかけた。

「・・・う・・・ん・・・」

元カノの話なんて、気持ちいいものではないけれど。

彼が、プロポーズまでした昔の恋人。

聞かなかったらこの先ずっと、モヤモヤとした感情が残ったままでいるかもしれない。

そう思った私は、しばらく考えてから「聞きたい」と言って、彼に話を促した。

「わかった」

頷くと、綾部くんは言葉を選ぶようにゆっくりと過去の話をしてくれた。

「バイト先で会ったって話は聞いてると思うけど。そのとき・・・オレが高2で、あの人が大学3年生だったかな」
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