秘密の記憶は恋の契約
「どうすっかなー・・・。そういうところもかわいいからなー・・・。仕事中、わざと手え出すかもしれない」

「ちょっ・・・」

「絶対やめて!」と振りあげた私の手を、彼は軽々と受け止める。

「なにしてもかわいく見えるから。無駄な抵抗はほんとに無駄だぞ」

「なっ・・・」

綾部くんが笑う。

向かいのサラリーマンたちが全員寝ていてよかったと、私は火照った頭で心底思った。


(聞こえてたら、相当おめでたいカップルだと思われるよ・・・)


恥ずかしさを隠すため、私は怒った顔で下を向く。

すると、彼は「冗談だ」と言って、私の頬を撫でるように指の甲を滑らせた。

「まあ・・・多少は大目に見てほしいけど。いやがることはしないから。

でも、社内だからって気にすることはないんじゃねえの。今まで通り、普通にしてればそれでいいだろ」

「・・・うん・・・」

優しい声音に、思わず頬がゆるまった。

ちらりと彼に視線を向けると、安心感のある笑顔があった。

「ああ・・・そうだ。高級ディナーも連れてかないといけないな」

「えっ?あ・・・いいの?」

確かあれは、鎌倉へ行った初デートの帰り道。

アクアシュガーの仕事が上手くいったら、『高級ディナーに連れてってやる』と、彼は約束してくれた。
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