秘密の記憶は恋の契約
19時を過ぎ、辺りが暗闇に包まれると、メインストリートを抜けた海辺で花火大会が始まった。

砂浜を埋め尽くすのは、やっぱり大勢の人、人、人。

私たちはなんとかその人波をかきわけて、見物場所を確保する。

「見える?」

「うん・・・なんとか」

背の高い彼は、どこからでも花火は見えるようだけど、女子の標準よりやや小さめサイズの私は、何度か背伸びをしたりして、ベストポジションを探していた。

「もっと小さければ、肩車でもしてやるんだけど」

「肩車って・・・。いいよ、子どもじゃないんだから」

そんな文句を言いながら。

いつか、少し先の未来。

もしも私たちが結婚をして、そして子どもが出来たなら。

綾部くんはそうやって、子どもに肩車をしてあげるのかな、なんて一人想像をしてしまう。


(『花火だぞ!』とか言って、子どもと同じくらいはしゃいだりしそうだよね)


女の子かな、男の子かな。

彼と、彼の肩の上ではしゃぐ子どもの笑顔が脳裏に浮かんで、思わず「ふふっ」と笑ってしまった。

「ん?どうした?」

「あ、う・・・ううん!花火・・・キレイだなって思って」

「ああ。そうだな」

頷いた彼が、ふっと私に微笑みかける。
< 266 / 324 >

この作品をシェア

pagetop