秘密の記憶は恋の契約
「妹。彼氏が仕事でね、花火行けないかもって言ってたんだけど。最初からちゃんと見れたって」

「へえ。そっか。よかったな」

「うん。妹の彼氏もSEなんだ。だから、忙しいとなんか他人事じゃなくて」

「ああ、そうかもな」

「うん」

「・・・」

「・・・」


(あ、あれ・・・?)


さっきまで、ポンポン会話が弾んでいたのに。

なぜかふと、会話の流れが突然ピタリと止まってしまった。


(・・・えっと・・・)


考えるものの、こういう時に限って次の話題が見つからない。

私は沈黙を誤魔化すように、ずずっと紅茶を飲み干した。

なんともいえない微妙な空気が、二人の間を漂っていく。

窺うように彼を見ると、目と目がバチリと合ってしまった。


(・・・ドキ・・・)


「あ!あの・・・紅茶、おかわりいれてくるね!」

私は咄嗟に立ち上がり、キッチンに向かってまたもや逃亡。

ドキドキという心臓の音が、自分の耳にうるさく鳴り響いていた。


(どうしよう・・・一度意識しちゃうと落ち着かない・・・)


かっこよさに色気を足した、彼の浴衣姿を思い出す。

目があった時の彼の眼差しは、どこか熱をもっていた。

私は何度か深呼吸をして、ポットの準備を整える。

そしてそれを右手に持つと、リビングの方へと戻っていった。
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