秘密の記憶は恋の契約
「しょうがねーだろ。かわいいからからかってんだよ」

「・・・そんなのやだ!!」

一瞬だけ、「かわいい」って言葉に思わずぐらついたけど。

普段だったら、別にいい。

からかうことも彼の愛情表現だって、それは私もわかっているから。


(でも今は・・・)


初めて家で二人になって、私はすごく、ドキドキしていた。

もっと優しく、甘い雰囲気で、気持ちを汲み取って欲しかった。


(無言で肩でも抱いてくれれば、私だって、自然に甘えられるのに・・・)


口元をぎゅっと結んで、私はそのまま下を向く。

すると彼は腕を伸ばして、私に触れようとした。

「・・・美咲」

「・・・」 

けれど私は彼から逃げて、ますます口を尖らせる。

すねてしまった私のココロは、そう簡単には直らないのだ。

「・・・なあ」

「・・・」

「・・・・・・ごめん」

考えるような間をおいて、綾部くんが低い声で囁いた。
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