秘密の記憶は恋の契約
「ぜ、全然・・・そんな素振りなかったじゃない・・・!」

金田さんからは、今日の昼間に聞いたけど。

全く気付いていなかった私は、恥ずかしさから、半ば逆切れのようなテンションで彼を責めたてる。

「・・・お前が鈍感すぎるんだ。食事に誘ったことだって、何回かあるだろ」

「えっ!?えっと・・・まあ・・・ランチとか?よく誘ってくれるよね」

同期だし席は隣だし、時間が合えばランチに誘ったり誘われたり、お互いにすることは確かにある。

それを、さも特別なことのように言われた私は、戸惑いながら返事した。

「バカかおまえは・・・。夕食も・・・映画に誘ったことだってあるぞ。全部、用事があるとかで断られたけど」

「え!?そ、そうだっけ・・・?」

「そうだ。多分、おまえは、オレが誘ったところで『同期のみんなと行く』とでも、勝手に解釈したんだろ。

こっちは、かなり緊張して誘ってるのに」

「そんなこと・・・!じゃあ、ちゃんと『二人だけで』とか、わかりやすく言ってくれればいいじゃない」

「わざわざ言わなくても、雰囲気で普通わかるだろ。

でも・・・そうだな、ここまで鈍感なら、言っておけばよかったな」

呆れたように呟くと、綾部くんは先ほど届いたとんかつ定食に、やっと、という感じで手をのばす。

そんな彼に合わせて、私も目の前で待っていてくれたハンバーグに、ザクリとナイフを入れてみた。

二人で、沈黙の中モグモグと食事を開始する。
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