秘密の記憶は恋の契約
目の前からは、おいしそうな匂いがふわりと漂ってきたけれど、私はいま、それを口できる状態ではない。


(好きって・・・綾部くんが、私を!?)


金田さんから言われていたし、「ぐーすかにゃんこ」の件もある。

綾部くんが私を好きだって・・・その可能性も、もちろんそれなりに考えてはいた。

けれど、それはあくまでも妄想の世界であって、実際に「好きだ」と告白されるなんて、思いもよらないことだった。

「好きなヤツとか、いるのか?」

固まったままの私に、綾部くんは真剣な眼差しで問いかける。

私はドキドキとした心臓を押さえつつ、うつむいたまま返事した。

「いないけど・・・」

一年前、付き合っていた彼氏にフラれてからは、彼氏はもちろん、好きなひとすら出来てない。

「じゃあ、オレと付き合ってほしいんだけど」

「えっ!い、いや、そんな急に・・・。あの・・・本気で言ってる?」

「当たり前だ」

戸惑って疑いの質問をした私に、間髪入れない彼の返事。

「今朝のことでなんかひっかかってるのかもしれないけど、別に・・・昨日今日でおまえのことを好きになったってわけじゃないからな。

梅村のことは、ずっと・・・1年前くらいから、ずっといいなって思ってたよ」

「えっ!?」


(う、嘘!)
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