秘密の記憶は恋の契約
「じゃあ・・・今日はごちそうさま。私、こっちだから」

ファミレスでごちそうしてもらった後、いつものように電車に乗り、最寄り駅で一緒に降りた私たち。

駅の改札口を出たところからは、私は北口、綾部くんは南口方向に分かれるため、私は別れの挨拶をして右手をあげた。

けれど。

「今日は送ってく」

「えっ、いいよ。私、遅くなった日はいつもタクシーで帰っちゃうから」

「・・・いいから。彼氏に昇格した日くらい、ちゃんと家まで遅らせろ」

そう言うと、綾部くんは私の手を取ってスタスタと北口に向かって歩き出す。

「えっ!?ちょ、ちょっと・・・!」

いきなり繋がれた右手。

急速に縮まった距離に、私は恥ずかしさと戸惑いで頭の中が混乱した。


(もう、手をつないだりするの?)


ファミレスに行くときに、早くも手首はつかまれたけど、きちんと手を握られたのは、今がまさに初めてだ。

包み込むような、綾部くんの大きな手。

意識が集中する右手が、ぐんぐん熱くなっていった。


タクシーの後部座席に乗り込むと、綾部くんは運転手さんに私の家の場所を伝えた。

休日出勤の際、綾部くんは「ドライブがてら」と、時々車で通勤するので、帰りが一緒になるときはついでに私も送ってくれる。

そのため、彼は私の家の場所を知っているのだ。

「その後で、また南口方面に向かってください」

「はい。わかりました」

綾部くんの言葉に頷いた運転手さんは、料金メーターを押してシフトレバーを動かした。
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