秘密の記憶は恋の契約
鎌倉駅にほど近い駐車場に車を停めると、私たちは駅に向かって歩き出す。

「江ノ電に乗るから」と言う綾部くんに続いて、路面電車の改札に入った。

小さなホームは、すでに家族連れやカップル、女性グループでにぎわっていて、乗車の列に並んで5分ほど待つと、かわいらしい佇まいの緑色の電車が現れた。


(久しぶりだな、江ノ電)


懐かしい列車の雰囲気に、なんだかウキウキ嬉しくなる。

電車に乗り込んだ私たちは、ちょうどよく空いていた二人分の座席に、隣合って座った。

「この時期に来たことある?鎌倉」

混雑する車内。

ピタリとくっついた腕を意識する私に、綾部くんが問いかける。

「うーん・・・。どうだったかな・・・。やっぱりお正月が多いから、初めてかもしれない」

「そっか。キレイだぞ、紫陽花」

「え?」


(紫陽花!?)


「もしかして・・・紫陽花見に行くの?」

「そりゃそーだろ。この時期の鎌倉って言ったら、紫陽花以外なにがある」

当然のことを聞くなと言わんばかりに、綾部くんがムッとする。

「いや・・・普通にお寺巡りかなって」

「プラスαで紫陽花だ。キレイだぞ、本当に」

力強く語る彼に、私は思わず笑ってしまう。
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