秘密の記憶は恋の契約
社員証兼セキュリティーカードを使えば、会社自体はいつでも出入りができるけれど、基本の始業時間は9時からで、ほとんどの社員は10分前に出社する。

私も例に漏れずだけど、金田さんもいつも同じくらいだったはず。


(どうしよう・・・私は、徹夜してたことにしようかな・・・)


仕事をしていた形跡なんて、全くないと思うけど。


(あー・・・もう、このまま帰ってしまいたい・・・)


悩んでいる間も、時計の針は着々と時を刻んでいく。

ふと周りを見渡すと、顔見知りの社員たちが続々と出社しはじめていた。


(もう8時50分・・・今更帰れる雰囲気じゃないよね・・・。

金田さんには、トイレなんて言っちゃったし・・・)


ずいぶん長いトイレだな、と自分自身にツッコミを入れる。

「はあ・・・」

気が重い。

すでに、ため息の数は数えきれない。


(・・・いや・・・でも、綾部くんも大人だもん。

私が何でもない風を装えば、きっと大人の対応してくれるはず!)


そう自分に言い聞かせた私は、大きく深呼吸をしてロッカールームを後にした。





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