最高の恋の見つけ方
ろくにしゃべらない私に純は、特に気を使うでもなく、車を走らせる。



車を止めたのは、ちょっとお洒落な感じの、軽食も置いてるバーの駐車場。




「絵里は飲んだらだめだよ」



純は自家製のドラフトビールとピッツァを頼んで、私はタコスとレモネードにした。


マスターらしき男性が純に声を掛ける。


「高校生?制服はまずいでしょ」


「そんなんじゃないし」


純は笑顔で答える。


「大学時代の恩師なんだ、ここのマスター」


「え」



「今は非常勤講師して、夜はここでマスターしてる、ずっと、店を持つのが夢だったんだって」


「素敵な店だね」


「つぶれないように、なるべく通ってる」


楽しそうにしゃべる純を見ていると、私も楽しくなる。


「高校生も、色々あるんだ?」



「あるよ、まったく」


「大人みたいに、逃げ場もないもんな、俺だって、高校の頃は色々いらいらしてた。閉塞感、だったのかな」



「なんか」


「なに?」


「何を変えたらいいのか、分からないのに、今のままでいられない感じ」



「尾崎豊でも聞いたらすっきりするかもよ」



「だれそれ?」



「十七歳の地図」



「おじさん」



「4,5歳しかちがわないのに、おじさん? ちょっと、ショックかも」



「おじさん」



頭をかきながら、純が私を見る。



「それでも、勉強だけはちゃんとしろよ、勉強だけは、絵里を裏切らないから。やればやるだけ、身になる」



急に真面目になった純の言葉がうれしい。


ふっと、頼ってみたくなった。



「私のこと、無茶苦茶に壊してよ、ぶち壊してほしい、全部」



まっすぐに純を見て、私は言った。

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