溺愛結婚!?〜ふたつ目の婚約指輪〜
「私は濠としか恋愛したことがないし、濠しか好きになったことがないから、他の人の恋愛のあれこれはよくわからないけど。
結婚して夫婦になってもずっと私の恋人でいてほしいの。
私のことを一生懸命考えて、私のことを精一杯愛してくれる、夫であり恋人でいてほしいって、思ってる」
「当たり前だ。俺の愛情をバカにするな。
俺は透子に生かされていて、俺のすべては透子のためにあるんだ。
仕事もなにもかも、透子と生きるためのものだってわかれよ」
「濠……」
泣きたくない。
濠との大切な時間を目に焼き付けておきたいのに、一旦収まったはずの涙のせいで、濠の顔が滲んで見える。
「もったいない。濠の顔、ちゃんと見たいのに、泣いたら見えない」
既に泣き声になった私は頬を流れる涙を手の甲で拭いながらも、一生忘れることはないに違いない濠の顔を見つめ続けた。
涙の向こう側にいても、やっぱり男前だ、なんてことを考え、これほど素敵な人に愛され結婚できただけで、私の人生は輝いていると実感する。
「濠の顔が、揺れてる……へへっ」
溢れる涙が目の前の濠の姿を揺らすせいか、まるで水の中にいるような錯覚を覚えた。
ゆらゆらと濠の輪郭が変わり、優しい目元と呆れた口元が交互に見える。
不安定なこの状況は、まるで海の中で向かい合っているような感じだ。
海の中といっても、泳ぎが得意でない私は溺れてしまい、濠に助けを求めて手を伸ばしてしまう、そんな世界にいるような曖昧な感覚。