溺愛結婚!?〜ふたつ目の婚約指輪〜
「ふふっ。海で溺れてるみたい。さしずめ私は人魚? なんてね……」
濠が差し出してくれたハンカチを受け取り、流れる涙を拭いた。
気持ちを切り替え、涙を止めようと深呼吸をしたとき、濠の低い声が響いた。
「溺れるにしても、透子が俺に溺れるなら、上等だ。
生きている限り俺は透子に溺れ続けるのは間違いない。
それに、夫でも恋人でも、透子が望むなら、なんにでもなってやるから安心しろ」
「ご、濠」
再会し、付き合い始めてから十年もたったのに。
濠の甘い言葉にときめく自分をどうすることもできない。
夫婦としての時間を始めても、まだまだその実感はなくて、いつも濠に守られながら過ごしている。
仕事で華やかな結果を出して、多少なりとも名前が世間に知られるようになったけれど、それはすべて濠に愛されているという安心感があるからだ。
濠の腕の中で自由に泳ぐかのように、私は満ち足りた時間を過ごしながら仕事に集中し、大きな賞を獲ることができた。
濠の想いをはき違えて空回りし、自分ひとりで勝手に右往左往した。
それでも濠は私を諦めずにいてくれた。
甘い甘いレッスンを私に与えながら。