溺愛結婚!?〜ふたつ目の婚約指輪〜
私は体を乗り出してそう言った。
濠が私のために用意してくれたサプライズを、一生忘れることなんてできない。
夕べお店の名前を聞かされたと同時に「着て行く服がない」と焦った私にプレゼントしてくれたこのピンクのワンピースだって一生大切にする。
私が好んで選ぶパフスリーブの袖をひと目見て、濠の私への愛情を感じた。
「そろそろ、よろしいでしょうか?」
濠とふたり、見つめ合いながら満ち足りたときを感じていると、静かな声が聞こえた。
ハッと見上げると、お店の人が立っていて、にこやかな笑顔を向けていた。
「真田様からお食事はしばらく待ってほしいとうかがっていましたが、おふたりの門出をお祝いするワインもほどよく冷えていますので、お持ちしてもよろしいですか?」
黒いイートンコートが良く似合っている男性は、そう言って濠と私を交互に見る。
その温かいまなざしは、わたしたちの夜をお祝いしてくれているように感じた。
「お料理も、シェフが心を込めて作らせていただきました。
奥様が素晴らしい賞を受賞されたことも聞いておりますので、特別にご用意したデザートものちほどお持ちしますね」
「ありがとうございます、吉本さん」
「いえ、とんでもございません」