黄昏と嘘
アキラがハンカチ越しにぎゅうっとチサトの小指を握っている。
チサトは握られた小指を見つめながら意識しないようにと考えるがどうしても意識してしまい、怪我の心配よりも自分の熱が彼に伝わらないか、その方が気になった。
「待ってなさい」
少ししてアキラはチサトにそう言うとリビングの方へ行き、チェストの上にある薬箱を持って再び戻ってきた。
そして彼はチサトの小指を消毒し、絆創膏を巻く。
アキラの手は大きくて温かく、彼女の指をやさしくいたわる。
そういえばアキラの手でいつか触れてもらえたら、そんな淡い思いを抱いていたこともあった。
でもまさか、こんなかたちで現実になるとは考えてもいなかった。
チサトはもう泣きそうになるくらいに嬉しかった。
でもアキラはそんなチサトの表情を見て傷に対して不安になっているのかと思った。
「傷は深くないだろうから・・・」
「あの、・・・ありがとうございます。・・・迷惑かけてしまって、すみません。
先生が、その、早く帰ってくるかもしれないって聞いて・・・それで、」
どうにかわかってもらいたくてチサトは言葉を探し、選び、続ける。
言い方をひとつ間違えると自分の気持がアキラに伝わってしまうかもしれない。
それでは彼に迷惑をかけてしまう。