黄昏と嘘
今の自分にできること、それはアキラの邪魔にならない、迷惑かけない、それしかないと考えていた。
そんな彼女を見ながらアキラはまただ、と思った。
さっきも彼の言葉でコップを落とすほど驚かせたというのにどうしてか、チサトはアキラを恐れることもしなかったし、逃げることもしなかった。
そう、あのLL教室の時と同じだ。
チサトにしてみればそれは彼のことが好きだから、なのだがアキラはまさか教育者と学生という立場、しかも一回り以上も年の離れたチサトが自分に好意を抱いているとは全く想像もしていなかった。
当然、今回のこともまさか彼女が自分のために料理を作っていたという思いは微塵もなかった。
「それで、・・・キミ、夕食はどうするつもりなんだ?」
「え?」
彼女の予定としてはアキラと一緒に彼女自身が作った料理を夕食として一緒に食べられたら、そう思っていたのだが。
結果、こういうことになってしまい、夕食どころではなくなってしまった。
「・・・あ、えっと、何か適当にしようかと・・・。
えっと・・・あの!、先生は?」
うつむきながら消え入りそうな声で返事をしながらアキラの方はどうなのだろうか、と気になり最後の言葉だけははっきりと伝えた。
「僕はもうすませてきた」
ああ、やっぱり、そう思いチサトは落胆する。
でもそれも一応、こうなることも想定内であった。
結局、彼女がやったことはすべて無駄で、しかもこんな惨憺たる結果になってしまったということだ。
わかっていても気分が落ち込みそうになる。