黄昏と嘘
それからしばらくして、アキラが出来上がった料理をダイニングテーブルまで運んできた。
その頃にはチサトのほうの気持も少し、落ち着いてきていた。
「チキンライス・・・?」
チサトの目の前に置かれた皿からとてもいい香りが彼女の鼻をくすぐる。
その香りはそれまで空腹など感じていなかったはずなのに早く食べたいと彼女を思わせた。
同時にアキラがチキンライスを作るとは、そして彼とチキンライスの組み合わせがとても意外だ、とも思った。
チサトは我慢しようとしていたけれどどこか可笑しくてくすっと笑う。
「・・・なにがおかしいんだ?」
アキラは彼女と目を合わせることもせず、ぶっきらぼうにチサトに聞く。
チサトはキッチンに戻る彼の背中に向かって答える。
「あ・・・いえ、先生がチキンライスってなんか意外だなと思って。先生だったら・・・こうなんていうか、舌を噛みそうなくらいの難しい名前のフランス料理とか、そういうイメージだったから・・・」
キッチンに戻ったアキラはため息をつきながら無表情ままでシンクに水を溜め、手際よく道具を洗う。
チサトは彼の背中越しにきっといつもの表情の彼だろうと想像したが、今まで見たことなかったアキラの姿を嬉しそうに見つめた。