黄昏と嘘


食事も終わりチサトは部屋に戻ってベッドに潜り込み、暗闇の中、さっきの小指を見つめる。
そしてさっきまでの出来事を思い出して静かになっていた鼓動が再びドキドキし始める。
アキラが手当してくれた小指、それから後ろから抱き止められたこと、まだはっきりと感触を思い出せる。
その記憶で彼女の胸はまたきゅうっとなる。

視線を向けると椅子にアキラのハンカチがかけてある。
それは彼女も食事が終わってからキッチンに食器を持って行く時に見つけた。

アキラは片付けが終わるとチサトを残し、リビングを出て行ったのだがその時、ハンカチを忘れていったようでチサトはその自分の血で汚してしまったハンカチを一生懸命洗い、自室に持ち帰ってきた。
そして乾かすために椅子にかけているのだ。

また少しだけ先生に近づけたような気がする。
昨日よりも今日、それから今日より明日・・・?
それは私の思い過ごしかもしれないけど。

一緒に暮らしはじめて最初の頃、アキラはいつも帰ってくるのは夜中か、もしくは帰ってこないことも多く姿を見ることない日のほうが多かった。

そしてチサトはいつも孤独感と距離感を思っていたが、少しづつアキラのやさしさに触れ今では本当の彼を理解できてきているような気がした。
積極的に会話するとか、そんなことはないけれど、それでもチサトは嬉しかった。

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