黄昏と嘘

このままずっと一緒にいることができればいいのに。

そんなことを思ってみるがそれはチサトの一方的な思いであってアキラの方はそう思ってはいないだろう。

アキラは彼女にここに住まわせる条件として「3ヶ月」と期間を決めたのだから。
そして今はその約束の期間からももう1ヶ月過ぎてしまった。
この家を出るまでにあと、2ヶ月もない。
約束は守らなければならない。
だから新しい住処を探さなければならない。
でもチサトは新しい住処のことよりもアキラと離れてしまうことの方が心に引っかかっていた。
この場所に住み始めの頃、不動産屋や大学の学生課へ相談に行っていたけれど、最近は全くといっていいほど行ってはいない。

先生に迷惑をかけたくない。
でも先生と一緒にいたい。

複雑な思いが彼女の中で二分していた。



少ししてふと耳を澄ますとピアノの音が聴こえてきた。

また・・・あの曲だ、もっと近くで聴きたい。

チサトはそう思い、ベッドから起き上がり部屋を出てそっとピアノの部屋へと向かう。
わからないように邪魔にならないようにそっと黙って聴いてたらいいだろう、そう自分に言い聞かせて。

そして部屋の前までやってきたチサトはドアにそっともたれピアノの音色に耳を澄ませる。

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