黄昏と嘘

「やっぱり、言えないと思ったよ・・・!」

彼の言葉にチサトは顔を上げようと思いながらも、どうにも恥ずかしく、息苦しくなるようで顔をあげることができず、やっとの思いで小さく答えた。

「・・・先生は・・・意地悪・・・です」

チサトのその言葉が届いたのか届かなかったのか、アキラはいつまでも笑っていた。

意地悪だと言いながらもチサトは彼が笑っているから、彼女だけが知っている彼の笑顔。

きっと思っている通りの笑顔だと思う。
あの日、初めて一緒に笑った日。

だから、嬉しい、そう思った。

彼は立ち上がり、椅子にかけていた背広を手に取り、カバンを持ってリビングを出て行こうとドアに向かう。

「・・・ああ、そうだ」

すれ違いざま、アキラはチサトの方に向き直る。

「今日は早く大学を出れそうなんだが・・・」

「はあ・・・」

チサトはアキラの言ったことが半分理解できずに返事をする。


あれ、先生、早く帰るの?


少しして彼の言葉を理解した彼女、アキラが早く帰るってこと、だとしたら。
あの日、オムライスの日から一緒にご飯を食べたことなかったから、今度こそ名誉挽回できるかもしれないとアキラに聞いてみる。

「・・・あの、それじゃ私、今度こそ何か作りましょうか・・・?」

あの日もチサトの努力は報われることもなく、結局は全部アキラがやってくれた。

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