黄昏と嘘
「僕はいつもの・・・いや、車だから、・・・辛口のジンジャーエールを」
あっ!先生だ。
聞こえた声にチサトはハッとして顔を上げる。
「キミは何にするんだ?」
「え?」
普通にそんなことを聞くアキラにチサトはきょとんとした顔をする。
彼にとって横文字だらけのこんなメニューを見る、ということは全く、普通のことなのかもしれないが彼女にとっては普通のことではないのだ。
「あ、あの、」
チサトはなんとか自分がメニューの内容を理解していないことをアキラに伝えようと思うが、給仕がその場で注文を待っていたのでわからない、とは言えなかった。
このメニュー読めないんですってば。私、第二外国語はスペイン語を選択してるんですよ?
フランス語なんかわかるわけないじゃないですか!
てかスペイン語もよくわかってないんだけど。
そうはっきり言ってしまえば、すっきりするだろうけれど、給仕を前にして言うこともできず、言葉にしないでどうにか伝えたくて、少しアキラとにらみ合いの状態になる。
するとチサトの状況をやっと察知したように言った。
「なんでもいいか?」
そのアキラの言葉に必死に何度もうなずくチサトの姿に彼は笑いを堪える。
「彼女にはクランベリージュースを」
「かしこまりました」
一礼して給仕が厨房のほうへ去っていく後姿を見つめ、チサトはホッと息をついた。
そしてアキラがチサトの向かい側の席に着く。