黄昏と嘘

何か、言われるかもしれない、そう思ったチサトは両手で拳をつくり、テーブルに置いて、早口で捲し立てるようにアキラに言った。

「私、スペイン語ならわかるんですけどねっ。フランス語はわからないんです!」

「まだ何も言ってないじゃないか」

アキラは半分呆れ顔で答える。

「はあ・・・」

情けない返事をするチサト。
彼の言う通り、まだ何も言われてはいないし、あんな言い方をしたのではただの恥晒しだ。
そしてなにか、別の話題を、と思ったのだが。

ふと、それよりも・・・。

どうしてアキラは今夜、こうして自分を誘ってくれたのだろうか。
それが聞きたくなった。
アキラは自分のことを嫌っているはずなのに。

あのLL教室の時はっきりとチサトのことを嫌いだと言った。
なのに、どうして。
しかし聞いたところでもしまた「嫌い」という言葉がアキラの口から発せられてしまったら、と不安がよぎる。

でも本当に嫌いならこうして誘ってはくれないはずだ。
だとしたら、彼の今の本当のところを知りたい。

答えによったら傷つくかもしれない、いや、傷なら、もうはじめからついている。

・・・いろんな気持ちが交錯するくらいなら、はっきりとさせたい、そう思ってチサトは勇気を振り絞ってアキラに尋ねる。

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