黄昏と嘘
「あの、先生・・・」
「なんだ?」
「あの、どうして・・・私を・・・」
チサトがそこまで言いかけた時、ちょうど飲み物が運ばれてきて会話が途切れてしまった。
「お待たせしました」
そう言いながらテーブルに置かれる、アキラのジンジャエールとチサトのクランベリージュース。
炭酸の小さな泡、見ていると今のチサトの想いがぼやけてくるようだ。
きれいな赤の中にある小さな泡、そしてグラスに映る彼女の顔が逆さまに見え、それはまるで別のチサトがそこに存在していて、彼女を試すように見ているようにも感じた。
本当ニ聞クノ?
後悔ハ、シナイ?
いつまでもグラスを見つめ、何も言おうとしない、チサトをアキラもまた何も言わずじっと見つめる。
どこだっただろうか、こういう場面、以前にもあったような気がする。
アキラはゆっくりと記憶をたどる。
(泡がグラスの下から生まれてゆっくりだけど確実にちゃんと上がっていってるね。
こんな風にゆっくりでも迷わずまっすぐ自分をもっていけたらいいね・・・)
そんな風に笑って言っていたのは誰だっただろうか。
・・・いや、違う、こんなことを思い出すなんて。
なぜだろう、今日はいつになくネガティブになっている気がする。
アキラはチサトに気付かれないように小さく息を吐きながら、その言葉の主を思いだし、苦笑する。