黄昏と嘘
どうして誘ったのか、そんなことを聞くよりも、せっかくアキラが誘ってくれたのだからこんな沈黙では彼に申し訳ない、チサトは明るく振る舞おうと精一杯の笑顔を彼に向ける。
どうせなら、今を、この時間を、一緒に楽しく過ごしたい。
「そうだ、先生、そういえば、前に私が「すみません」ばかり繰り返したことがあったとき、謝ってばかりでなんでも解決しようとするって怒ったことありましたよね?」
「え?」
突然の話にアキラはそのまま彼女の言葉の続きを待つ。
「私、あのとき、本当に先生って怖いんだなあって思ったんですよ?」
「そんなことあったか・・・?」
チサトはアキラとの出来事は逐一、忘れてはいない。
彼女は楽しそうにその時の出来事を話し始める。
授業が終わってアキラに呼ばれたことで、周りの学生からヒソヒソとよくないことを言われたこと、
アキラが見つけてくれた電子辞書は大事なものだったこと、
「すみません」ばかり繰り返していたが、本当に無意識に「すみません」と何度も出てしまったこと、
怒られて心臓が口から飛び出そうなくらいに緊張したこと。
アキラは小さくゼスチャーを混じえながら、頬をピンクに染め、懸命に楽しそうに話す彼女を見つめながら思った。
どうして恐れているのなら今こうして一緒にいるのか。
彼女が自分と一緒にいさせるものは何なのか。