黄昏と嘘
「キミはそんな風にずっと僕のことを怖いと思っていたんだろう?
だったらどうして・・・」
思わず出てしまった言葉にアキラはハッとして途中で止めてしまう。
チサトもまたその言葉の続きがわかってしまったから彼女の顔から笑顔が消えて、心臓がドキンと鳴る。
あ・・・、そんなつもりじゃなかったのに・・・。
ヤバい、これは話を逸らさないと。
チサトは咄嗟にそう思った。
「えっと、あの、先生、私、今日・・・香水を・・・」
とりあえず、香水の話でもして、それからまた、チャンスがあれば、勇気があればその時に・・・。
そう思ったけれど結局、今こうして話を逸らしてしまったということはこのままずっと最後まで聞けないんだろうと、頭の隅のほうでわかっていた。
「香水・・・?」
「フェラガモって知ってますか・・・?」
アキラは香りに気づき、そしてチサトのその言葉にさっきまでの穏やかな表情が一変して強張り、そのまま黙りこんでしまった。
彼はさっきからの自分のネガティブになってしまう原因にやっと気付いたのだ。
それまでぼんやりとしていた「彼女」の輪郭がはっきりと姿を現した。
「先・・・生・・・?」
チサトの呼びかけにハッとしたように彼女を見る。
「この香り・・・知ってるんですか・・・?」
彼女はそう言いながらこの香水の話はしてはいけないことだったのかもしれないと瞬間的に理解した。