黄昏と嘘
案の定、アキラは何も答えない。
もしかしたらアキラは香水が嫌いなのかもしれない。
でも香水が嫌いなだけでここまで複雑な表情をするのだろうか。
とにかく彼を不快にさせたことには間違いはない。
余計なことするんじゃなかったと後悔するがもう遅い。
嫌な空気が流れる。
嫌な沈黙が流れる。
今まで一緒にいた中でここまで居心地が悪いのはなかったかもしれない。
チサトは言いようもない緊張感に襲われる。
するとそんなチサトの表情に気づいたのかアキラがぽつりと言った。
「・・・いや、なんでもない。気分を害させて悪かった・・・。
来たばっかりで悪いがちょっと仕事を思いだしたから、今日はちょっと先に帰らせてもらう・・・」
そしてアキラはチサトと目を合わせることもせず、手を挙げて給仕を呼んだ。
「先生?」
「・・・すまない」
そう謝るアキラにチサトは何も言えなかった。
何も聞けなかった。
何かある、というのは十分にわかる。
そしてその何かがアキラの本当を理解することにつながるかもしれない、そこまでチサトは思ったけれど、たぶん、今、どんな言葉を彼にかけたとしても傷つけてしまうのではないか。
そう思ったらチサトは何も言えなくなってしまった。