黄昏と嘘
「どうしよう、でも・・・」
チサトは再びヒールを履いて、足を引きずるようにしてアキラを追いかけるが、足の痛さに耐えかねて靴を脱いでしまう。
裸足になってしまうけれど、仕方ない。
足の痛みがマシになった分、さっきよりも早く走ることができ、アキラがビルの駐車場に入る所でどうにか追いついた。
「・・・ひとりにしてくれないか」
彼は背後のチサトの気配に気づいたのか立ち止まり、背を向けたまま、小声で言う。
追いかけて来てほしくないと思っていたことくらい彼女はわかっていた。
少なくとも原因はこの香水にあるかもしれない、ということも。
俯くと片足だけ裸足の自分が確認できる。
―ああ、そうだ、あの時、出会ったきれいなあの女性はきっとこんな風に裸足になるなんてあり得ないんだろうな。
あの女性ならきっとこんな惨めな姿で男の人を追いかけるなんてことはしないんだろうな。
あれ?でもどうしてこんな時に思い出すんだろう。
チサトは前に出会ったモモカと見間違えた女性のことを思い出していた。
なに、やってんだろ・・・、私。
そんなことよりも先生になんて言葉をかけたら・・・。