黄昏と嘘
「・・・先生のバカッ!!」
突然、チサトはアキラに怒鳴りつけ、そして脱いだヒールを彼に投げつける。
彼女の投げつけたヒールは見事にアキラの頭に命中した。
「痛っ・・・!何するん・・・?」
そう言いながらアキラはやっと振り向き、顔を真赤にして泣きそうな表情のチサトを見てハッとする。
「周りに厳しくして寄り付かせないようにして!
それで自己満足に浸ってたって・・・、私、わかってるんですから!
先生は・・・、本当はそんなひとじゃないんだから・・・!」
地下にある駐車場のせいか、彼女の声は大きく反響する。
チサトは一気にそう言うとそのまま俯き、しゃくりあげて泣きだしてまう。
アキラはそんな彼女の言葉に胸が締め付けられるような思いをしたが、ただ何も答えず彼女を見つめるしかできなかった。
チサトはもう自分はどう嫌われてもいい、そう思っていた。
彼は何も悪くはない。
だから何も自分を責める必要もないのだ。
アキラにそんな本来の自分に気付いてもらえるのなら彼女自身、どんなに嫌われてもいいと思っていた。
ふたりの間に冷たい風が吹きぬけてゆく。
少しして彼女は顔を上げてアキラに頭を下げる。
「変なこと言ってすみません・・・」
それだけ言ってチサトはくるりと背を向けた。