黄昏と嘘
きっと先生、私のことまた嫌な奴だって思ったに決まってる。
何もわかってないくせに生意気でエラソーなこと言って。
だいたい先生のそれまでの事情なんて詳しく知らないくせに。
チサトは走って駐車場を出てそれからゆっくりと歩く。
そしてそのときやっと自分が片方しか靴を履いていないことに気づいた。
さっきからずっと片方しか履いていなかったのにアキラを追いかけるのに必死で忘れてしまっていた。
それまで感じていなかったのに今更、地面が固く、冷たい。
靴を履くにもアキラにそれを投げつけ、逃げてきたから履きたくても彼女の手元に靴はない。
あてもなくしばらくチサトは街を歩き続けるけれど、行く場所も思いつかず、何をしたいという思いもなく。
だいたい、片方、裸足でどこに行けるのか。
もう、帰ろう・・・。
帰るところは先生のところしかないけど・・・。
見えた地下鉄の入り口からチサトは階段を降りる。
階段を降りて改札のほうまで来ると構内は明るくて昼間のようだ。
そんなこと思いながらチサトは切符を買おうと財布を取り出す。
あ・・・あれ?
財布がない?なんで・・・?
必死になってカバンの中を探るが、財布は出てこない。
どこでなくしたか、忘れたか、記憶をたどるにもわからない。
これでは帰れない、チサトはカバンからスマホを取り出した。
一瞬、アキラに連絡しようと思ったものの、あんなこと言っておいて財布がないから帰れない、なんて言えるわけもない。
チサトはしばらくスマホを見つめていたが、カバンの底に突っ込むようにして片付けた。
チサトは仕方なく歩いて帰ろうと再び地上に出て国道沿いを歩き始める。
駅4つ分なんて大した事ないだろう、そう思ったが歩いてみると結構、きついと直に気持ちが挫けてしまった。
車のライトがチサトをどんどん追い抜いてゆく。
そしてチサトはやるせなくなり、夜空を見上げて大きくため息をついた。