黄昏と嘘
ちょうど見えた、雑貨店の軒先、
あ、あそこにしよう、
そう思ったとき。
突然、チサトの後ろから車のクラクションが鳴る。
その音に彼女は一瞬びっくりしたけれど、自分のことじゃないだろうと思い、無視して雑貨店へと向かう。
しかしクラクションは鳴り続く。
わ、私なの?だれ?な、なによ。
彼女は振り向き、確かめるけれど、見覚えのない車にやはり自分のことではないと無視をする。
それとももしかしたら傘なしで濡れてそのうえ、片方だけ裸足の彼女が珍しくて面白半分でからかわれているのかもしれない、そう思った。
となると徹底的に無視したほうがいいだろう。
しかしいつまでも彼女に向かって鳴り続けるクラクションにだんだんと苛立ちが大きくり、我慢できずとうとう大声を出した。
「う・・・ウルサイっ!」
でも、そんなチサトの目に映ったものは。
あ。・・・先生。
チサトの視線の先にはシルバーのBMWの運転席の窓から顔を出している、アキラの姿があった。
立ち止まるチサトに彼は車から少し怒ったように声をかける。
「先に帰ったから家にいるものだと思ったら帰った形跡もない。電話も繋がらない・・・。
新しい住処もまだ見つかってないくせにどこ行くつもりだったんだ?」
電話なんて鳴ってはいないのに、そう思いながらチサトはうつむいてカバンの底からスマホをそっと取り出すと不在着信が3件。