黄昏と嘘

「どうした?」

「あ、あの」 

でも彼女の迷いは一掃される。
見えた助手席には彼のカバンとコートが置いてあったのだ。
ということは彼の荷物の邪魔にならないように、チサトは自然と後部座席に座ることになる。

少しホッとする反面、こころのどこかでガッカリしながら、チサトは後部座席のドアに手をかけ、ドアを開ける。

「こっちのほうがよかったのか?まるで子どもだな」

アキラは少しがっかりしたようなチサトの表情に気付いたのか、助手席に置いていたカバンとコートを後部座席に置きながら彼女に言った。

隣に座ってもいいの?・・・でも子どもってどういう・・・?

一瞬、チサトは意味がわからなかったけれど、彼に促され、助手席に移動する。
そしてチサトは席に着いたときにようやく言葉の意味を理解した。
助手席のほうが景色がよく見え、それを楽しむような、そういう意味で彼女も助手席がよかったのかと言ったのだ。
チサトは苦笑するけれど、それでもアキラの隣にいることができて嬉しかった。

手際よくエンジンをかけ、ギアを動かす姿を見つめながら、こうして少しずつ、また彼のことを好きになっていくんだ、と感じた。






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