黄昏と嘘

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「あ、いらっしゃい。
先生、今日は可愛いお嬢さんと一緒なんですね?
仲良さそうで羨ましい」

店主はアキラのこと知ってるようで親しげに声をかけた。
彼はこの店の常連なんだろうか、チサトはそんなことを思いながら、店主が言ったさっきの「仲よさそう」という言葉に顔が赤くなり、心臓がドキッと鳴る。

けれどそんな言い方、彼女自身は良くてもきっとアキラは怒るに違いない、チサトは少し不安になり、恐る恐るアキラの横顔を見上げる。

しかしアキラは怒ることなく

「ああ」

とそれだけ答えて席に着く。


否定しないんだ・・・。


そして目の前でラーメンが湯がかれているのを見つめながら、以前に交わしたアキラとの会話を思い出す。

「・・・本当に先生でもラーメン食べるんですね」

チサトは笑ってアキラにあのときと同じことを言う。
アキラはそれにふっと静かに笑って応える。

少しして出されたラーメンは温かでダシのいい香りがする。

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