黄昏と嘘
---------------------------
「あ、いらっしゃい。
先生、今日は可愛いお嬢さんと一緒なんですね?
仲良さそうで羨ましい」
店主はアキラのこと知ってるようで親しげに声をかけた。
彼はこの店の常連なんだろうか、チサトはそんなことを思いながら、店主が言ったさっきの「仲よさそう」という言葉に顔が赤くなり、心臓がドキッと鳴る。
けれどそんな言い方、彼女自身は良くてもきっとアキラは怒るに違いない、チサトは少し不安になり、恐る恐るアキラの横顔を見上げる。
しかしアキラは怒ることなく
「ああ」
とそれだけ答えて席に着く。
否定しないんだ・・・。
そして目の前でラーメンが湯がかれているのを見つめながら、以前に交わしたアキラとの会話を思い出す。
「・・・本当に先生でもラーメン食べるんですね」
チサトは笑ってアキラにあのときと同じことを言う。
アキラはそれにふっと静かに笑って応える。
少しして出されたラーメンは温かでダシのいい香りがする。