黄昏と嘘
「おかえりなさい、遅かったね?」
「あ、ああ。まだ起きてたんだ・・・。
先に寝ていてもよかったのに・・・」
「でも、アキラがいつも一生懸命頑張ってるのにそんな、私だけ先に寝るとかやっちゃいけないでしょう?」
そんな彼女の言葉にアキラは申し訳無さそうな顔をする。
その表情はまたリョウコを哀しくさせる。
「そんな気遣わなくてもいいのに・・・」
(そんな気遣わなくてもいいのに・・・)
お互いがそう思い、お互いがそう言うことが増えた。
どうしてだろう、リョウコは結婚してからアキラの存在がずっと遠くに感じるようになっていた。
一緒に暮らしているはずなのに。
こうして言葉を交しているのに。
すぐに手の届く距離にいるというのに。
しかし言葉ひとつかけるのにもいつの間にか彼に今、言葉をかけてもいいのだろうか、と躊躇してしまうことがある。
以前はそんなことなかったのに。
「ね、それより、ダイニングに来て?
今日ね、ガーベラの花を・・・」
「ガーベラ・・・?」
一瞬、困惑したような表情をしたアキラをリョウコは見逃さなかった。
どうしよう、嫌な想いさせてしまったのだろうか、と彼女は少し不安になる。
そう、だからなのだ。
だから話しかけることすら、怖くてできなくなってしまうのだ。