黄昏と嘘

「へ・・・え・・・。
そうなんですか。
あの先生が、なんだか意外・・・」

チサトはモモカに悟られないようにできるだけ平静を装い、返事をした。

「もっとお互い素直に思っていたことを言葉にすればこんなことにはならなかったのかもね。
だって本当に大学のころ、ふたり、すごく楽しそうだったもの」

私の知らないふたりの時間・・・。

アキラと彼女の過ごした時間は長く、アキラとチサトの過ごした時間はその彼女がアキラと一緒に過ごした時間の長さには敵わない。

あのLL教室でアキラが泣いていた理由がわかるような気がした。


「きっと・・・そんな惨めな自分を知られたくない、よかれと思ってしてきたことが結局は彼女を傷つけた罪悪感、そんなところかな?
彼が他人に厳しくすることで人を寄せ付けないようになったのは・・・」


知りたかった話を聞いてもチサトのこころは晴れることはなかった。
それはアキラの彼女への想いを知ることとなってしまったからだろう。
今もきっと彼は彼女に想いを寄せ、それまで彼女にさせてしまった哀しい想いを後悔しているのだろう。


「どうしたの?チサトちゃん?」

「あっ、いえ、なんか意外すぎてびっくりって感じ?
・・・あ、そうだ、石田さん、今ね池袋で面白いイベントやってるんですよ?
行きませんか?」


チサトは精一杯の笑顔で誤魔化し、努めて笑う。
そしてそれはまた自分のこころが今、傷ついているということも自分自身が理解しないように。


「そうね、時間あるから行ってみようか?」

「はい!」



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