黄昏と嘘

「もう、いいんだ・・・」

「え・・・?」


アキラはリョウコがいつかこの先、自分の前に現れたとき、それまではきっと平静さを失ったしまうかもしれないと思っていた。
しかし実際、そういう場面が来たけれど、それは自分でも思った以上に不思議と冷静だった。

彼女と話をしているうちになぜそう穏やかでいられたのか、考えるうちにだんだんとわかってきた。
それは今、彼にはチサトが側にいるからだ。

それだけチサトの存在がアキラの中で重要になっていた。
だから、昨夜も彼女を・・・。


「これで彼女との別れが確実なものになったんだ。
もう僕も過去に囚われることはないと思う。
彼女もキミがいると思ったからきっと・・・」

「・・・先生・・・」


別れが確実なもの・・・って?
それって・・・。


「彼女が幸せになってくれたら・・・それで・・・本当に終わりが来るんだ」


ああ、どうしよう、やっぱり、謝ってすむようなことじゃない。
アキラの発する言葉にチサトは心を痛めるが、でももう今更どうしようもなかった。


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