黄昏と嘘
先生が?
私を?
チサトはこれは自分の願望が夢をみさせているだけだと必死になって思い込もうとした。
それでもアキラの声は真っ直ぐにチサトに伝わってくる。
「そんなことすら気づくのが遅くて、それでも……だから……!
出てきてくれないかっ!?」
チサトはスピーカーと売店の向こうに見えるアキラとを交合に見つめ、確かめるようににゆっくりと一歩を踏み出す。
そして踏み出した足はいつの間にか無意識にアキラの方に向かって人ごみをかきわけて走り出す。
「せ・・・先生・・・!
何、言ってんですか・・・!」
チサトはもっと気の利いた言葉を言いたかったのだけれど。
もっとちゃんとした言葉を返したかったのだけれど。
もうそんな言葉しか出てこなかった。
けれど彼は「やっと、見つけた」そう言いながらチサトの大好きなやさしい笑顔を向けた。
その彼に迷わずチサトはアキラに手を伸ばし、彼女の手が彼の温かい胸に触れると同時に彼は彼女の背中に腕をまわして抱きしめたとき。
チサトは全部、ウソじゃないと確信した。
同時にチサトの耳元で怒ったような声が聞こえた。
「どうして人の話をちゃんと最後まで聞こうとしない?」
「え?」
「さっき、言っただろう。
人の話をちゃんと最後まで聞くようにって。
なのにキミは勝手に判断して出て行って・・・」
そっとアキラの表情を確かめるとやっぱり怒ってるように見えた。