黄昏と嘘
「おい……っ!」
そのときチサトの背後から違う男のひとの低い声が聞こえた。
今度は……?また変なひとに絡まれるのだろうか、そう思うともう彼女は怖くて振り向くことすらできない。
「オマエ、何してるんだ?」
揉めてる男女を興味本位で見るのは楽しいだろう、自分は強いと自負している人間なら他人で関係なくても絡んでちょっかい出すのも楽しいかもしれない。
きっとこの声をかけてきたひとも面白半分で声をかけてきているのだろう。
一体、自分が何をしたっていうのだろう、どうして自分ばかりこんな目に遭わなければならないのだろう。
もうチサトは泣きそうになる寸前になっていた。
でもその声の主のおかげでチサトの腕を掴んでる彼の手の力が少し緩み、彼女は逃げるチャンスができ、逃げられるかどうか彼の様子を伺おうと思い切ってチサトは顔を上げる。
でも彼はチサトを見てはいなかった。
さっきとは打って変わって少し怯えた顔をして彼女の向こう側、少し見上げるように声をかけてきた男性の方を見ていた。
どうしたんだろうか……。
意外な態度にそのまますり抜けて逃げることもできるのにそのままの状態で止まる。
その瞬間、彼女の後ろから手が伸びてきて彼が掴んでいたチサトの腕を引き離した。
「うわっ……!小野……」
えっ……?小野……って?まさか。