黄昏と嘘
「キミ……あのときの……」
「すみません……」
せっかくアキラがチサトのことを思い出したというのに彼女は何も言い訳できず、そう答えるだけだった。
こんな状況だ、きっといい加減な女だと思われたかもしれない、そう思うと余計に何も言えなかった。
そんなこと、ないんだけど。
沈黙が重い。
その重さはそのままチサトが彼に与えてしまった悪い印象の重さ。
早くこの場から離れたい、そう思いながらもせっかく学校以外の場所でこうしてふたりで会えたのだからもう少し一緒にいたい、気持ちが交合にいったりきたりしている。
少しでもなんとかこの重い空気を回避しようと、なにか……なんでもいいから何か言わなければ。
「……あの、一瞬で追い返すなんて……すごいですね……」
無理した笑顔でそう言ってみたものの、こんな言葉のどこがどう和むんだろうか、何がどうすごいのだろうか。
そうでなくもっと他に……、それにしてもどうしてもっと気の利いた言葉が出てこないのだろうか。
当然、アキラは表情を変えることなくチサトの前に腕を組んで立ったままだった。
そしてさっきよりも重く、気まずい沈黙が続く。
これではますますアキラに嫌われてしまう、いたたまれない雰囲気でそう感じ取り、余計に焦る。
でも、どうして、なんで、こんな状況で、会ってしまったのだろう。