黄昏と嘘
チサトはぼんやりとアキラの背中を見つめ、ふうっと気持が切れてしまったような、空虚な思いに襲われる。
そして何を思ったのか、わずかな望みを賭けて歩き出そうとしていたアキラの背中に向かって言った。
「……先生、私、住むところなくなっちゃったんです。
夏休みはとりあえず実家に戻るけど……。
それからが……」
チサトの声が聞こえていようがなかろうがアキラはきっとそのまま知らん顔して去ってしまうだろう。
そう思ったけれど、でも逆にそう思ったから言いたいことが言えたのかもしれない。
なのにアキラの足が止まる。
え?こんな賑やかな街中でさっきの私のぼやきのような声が聞こえたの……?
どうしよう、振り向かれたら、何か言われたら、なんて答えればいい?
チサトは急に焦り始める。
そしてゆっくりとアキラは顔だけこちらに向けた。
「それがどうした?」
「えっ?あの、えっと……」
どうしたと言われても答えようがない。
「いえ、あの、なんでもないで……、」
そこまで言って言葉を止めて大きく息を吸って、そして吐いて続けた。
「だから先生、お願いです……」