黄昏と嘘
言うか、でも言ったところで何になる?
そんな思いがチサトの中にあったけれどもう夏休み、授業もないしアキラに会うこともしばらくはないだろう。
「……私を助けてください!」
「え?」
アキラは不思議そうな顔をしてチサトに聞き返す。
それは彼にとって突然の意味不明の言葉であり、そういう表情をするのも当然のことだろう。
言ってしまった、という思いのチサトはもう言葉を止めることなく訴えるように繰り返す。
「お願いします!」
「助けるって……?」
「はい……。
とりあえず……私の荷物を届けるための……住所を貸してもらえないでしょうか……。
沢山はありません、少しだけですから」
さっきの時のように、またとんでもないひとにとんでもないことを頼んでいる、冷静に考えればそうかもしれない。でもこの時、チサトはさっきの届かないと思っていた自分の声が彼に届いたということで、もしかしたらどうにかしてくれるかもしれないと都合よく考えた。
それに頼むのならさっきの彼よりもアキラのほうがずっといい。
「何バカなこと言ってるんだ?
そんなことできるわけないだろう?」
当然、アキラはそう答え、そしてチサトを放って離れて行こうとする。
思わず彼女はそのアキラの後姿に向かって言う。