ありふれた恋でいいから
「実乃~。寂しくなったらいつでも帰って来るんだよ~」

「うん。玲ちゃんも絶対泊まりに来てね。約束だよ?」

「ホント?畑野くんに迷惑がられないかな?」

「そんな事ないよ!玲ちゃんなら大歓迎!」

地元の短大に進む玲ちゃんと別れを惜しむように何枚もツーショットをカメラに収めて。
クラスの友だちともたくさん記念写真を撮って。

「須藤、これ」

迎えに来てくれた畑野くんから制服の第2ボタンを貰った時は、幸せ過ぎて涙が出た。

「…ありがと」

半年前には、まさかこんな卒業式を迎えるなんて思いもしなくて。
掌に転がる小さなボタンが、春を予感させる陽の光に包まれてキラキラと輝いていた。
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