願う場所、望む奇跡
「ちょっ、ちょっとっ……」
焦って離れようと義哉を押すけど、ビクともしない。
それどころか、抱きしめている手に力がこもっている。
「もう、いい加減諦めて」
耳元で、そう囁かれる。
「誰に何を言われても、他の人を好きになることはない。母さんには悪いと思っているけど、止められないから。
お願いだから、俺の気持ちを否定しないで」
弱々しい声に、少し震えている手。
平然と見えても、義哉だってそうとうな覚悟を持って言っているんだ。
それだけ、私たちの恋はあってはならないもの。
この言葉を受け止めて義哉を選べば、罰は受けるだろう。
何かしら失うことになるかもしれない。
それは、分かっている。
ここでどうにか私が突き放せば、家族に戻れる。
でもそれは、見せかけだけのものになる。
姉弟という絆はなくなってしまう。
どっちを選べばいいのか分からない。
「大丈夫。松本さんみたいに大人じゃないけど、夏希を守れるだけの力量はあるつもり。
何かを失っても、その分俺が傍にいるから」