願う場所、望む奇跡
松本くんの名前が出て、ふと思い出した。
“夏希が本当に好きな人と笑っていて”
今、義哉の想いから逃げるということは、松本くんの想いも踏みにじるということになるのだろうか。
人が納得出来る恋ではないのに、松本くんは自ら引いた。
頑張れと言ってくれた。
だったら私は、素直になるべきなのか。
この手を取ってしまえば、もう後戻りは出来ない。
誰にも言えなくて苦しいこともあるかもしれない。
だけど、義哉に彼女が出来て、それを黙って見ている方が嫌だと思った。
彼が、誰よりも私を選んでくれた。
それだけで、十分じゃないだろうか。
……抱きしめられたままの私は、ゆっくりと両手を伸ばし、義哉の背中に回す。
「夏希?」
それに気づいた義哉が、そっと私を呼ぶ。
それだけで心臓は高鳴るのに、今更否定は出来ない。
私は、義哉の胸に顔を埋めて、ゆっくり口を開く。
「何も、望まない。結婚なんてしなくていい。ただ傍にいて。私も、好き……だから」