願う場所、望む奇跡
「そんな籠の中で生きるのに嫌気がさした時、兄の元へ逃げ込んだ。
独身だった兄は、実家からの追手にバレないように、私を匿ってくれた。そこで、出産してそれから逃げたの。ほぼ、駆け落ちね」
その当時のことを思い出すように、笑いながら言う。
どれだけ苦労したのか、私には想像もつかない。
笑うことさえ出来ない現実だ。
それを表にも出さずに頑張っていたなんて。
「それから、兄と過ごした。婚姻届は受理されないから、事実婚になるのかな。夏希も義哉も、その人と育てた。
ただ、やっぱりそんな生活も上手くいかなくて。夏希が10歳の時に別れたの。
嫌いになった訳じゃないわ。
子供たちが成人したら、また一緒に暮らそうって約束したの。そのため、連絡も取っていたわ」
「え?連絡取っていたって、まさか……」
お母さんの言葉に、私はまた義哉と顔を見合わせた。
そんな話しを義哉に聞いたのだから。
「……知っていたの?」
「俺が、手紙を見つけたんだ。
それに、母さんに電話した時、そんなこと言っていたし」
「あ、そうだったかも」